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私達が見ている世界を観る(ゆきわり草10月号)

令和元年9月29日(日) 園長 尾﨑 春人


極暑に怯(おび)えた気候も、いつしか初秋の風を感じるように成りました。特に私の様な高齢者や子供たちにとっては熱中症の恐怖からやっと解放されてやれやれといった心境です。しかし、間もなく訪れるであろう冬も次の夏も少しもその怪力を弱めるデータも偶然性も予測する超高速計算の結果を知らされてはおらず、地球温暖化現象は益々進行するであろうことは確実性を深めるばかりです。

今日の地球全体の気象や私達人類を含む生き物の生息環境を荒々しく崩し始めた原因が、約240年昔に成立した産業革命であることはご存知の通りです。革命であったかは別にして、現在の世界の国の中には鉱物資源(石炭・石油・木材・液化ガスなど)を燃やして、毎日のように温室ガスを地球上に排出し、温室ガス発生を抑制している植物群を減らす企業が少なくないと報じられています。(「地球のこと」WWF 2019 AUTUMN )その様な気候変動に危機感を覚え、大人達(主に企業家や政治家)に「地球管理」は委(まか)せておけないと、未だ選挙権を持たない若者達が立ち上がったニュースには本当に嬉しくなりました。特にスウェーデン生まれの16才、グレタ・トウンべリーさんの活動ぶりには感動し、大人の一人として恥ずかしく成りました。様々な温暖化対策集会に参加し、ニューヨーク市で開かれたサミットに出席する際は、大量に温室ガスを発生する飛行機に乗らず、ヨットで英国から2週間かけて大西洋を横断したそうです。1980年頃からインドネシアで熱帯樹林を大規模に伐採し製紙業を起業したシナルマス・グループのAPP 社に対し強い警告を発する運動に(WWF協力者として)支援している私ですが、その無力さを思い知らされます。私達に出来ることとして、子どもたちに何を働きかけたらグレタさんに一歩でも近づける方法はないでしょうか。

月を観る(十五夜)


野鳥を観る(バードウォッチング)

モンテッソーリ教育の環境下では、その機会は無限に存在すると説いています。但し第ニ次世界大戦の終戦間も無い頃ですから、海水や大気温の上昇・汚染などに直接触れてはいません。先づ平和を築くこと・第二次大戦後の新しい良い人類の必要性・そして人々に幸福をもたらすアイデアや方法論を制限することない社会の実現を願っていたようです。現代世界史を覗(のぞ)く限り、彼女の予告とは正反対の事象ばかりが目立ちます。とはいえ太陽光の利用や宇宙開発を予言し、もたらされる公平な富の分配まで言及していることでも理解される通り、M・モンテッソーリ先生という大先輩は、人間の心に対して鋭く豊かな直観力と、ある種の温かい人間観を持ち、人々の間に類似しているものを見つけ出す特技を身に付けておられた方のようです。

樹々の間に見え隠れするシジュウカラやコゲラといった小さな野鳥の姿を見つけるのはやさしいことではありませんが、かすかに揺れる樹の小枝や鳴き声からその所在を予測できる子は少なくありません。自分の直観と見込みや推測、それらが何とかして命中してくれたらという願望は人間の本能でもありましょう。その願望が、私達が外界を見る時、カメラの様に透過光を在りのまま定着させたものではないことは、目の網膜は半球状に湾曲しているにも拘らず外界を平面に見ていることでも理解できます。すべて私達の脳が網膜像からその都度合成推測しているのです。その推測像を如何に実像との誤差を少なくするかが、幼稚園時代に与えられた課題の一つでもあり、情緒や感情、そして認識力や表現力などと関連しながら発達し、その人の個性の主要部を熟成する種でもあるのです。


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